胸や背中に痛みを感じるとき、その背景には様々な原因が考えられます。
特に注意が必要なものとして、循環器系では心筋梗塞や狭心症、大動脈解離などの命に関わる疾患が挙げられます。また呼吸器系の疾患でも、胸膜炎や気胸、膿胸などがあり、これらは深呼吸や咳で痛みが悪化する傾向があります。さらに、肺がんや食道がんなどの悪性腫瘍が初期に背部痛として現れる場合もあります。
一方で、筋肉や骨、神経が原因となる痛みも多く、例えば身体を捻ったり腕を動かした際に痛む、あるいは特定の一点にズキズキした痛みを感じるといったケースでは、整形外科的な要因が考えられます。このような痛みは持続時間が短く、再現性があるのが特徴です。
ただし、明らかに原因が分かっている場合を除き、重大な疾患の可能性を完全に否定するのは難しいため、違和感を覚えた時点で早めにご相談ください。
胸・背中の痛みの原因となる主な疾患
肺や胸膜に関する疾患
- 気胸
- 胸膜炎・膿胸
- 肺炎
- 肺がん
- 悪性胸膜中皮腫
- 肺塞栓(エコノミークラス症候群)
心臓や血管に関する疾患
- 貧血
- 大動脈解離
- 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)
神経・筋肉・骨に関する疾患
- 肋間神経痛
- 帯状疱疹
- 肋骨の骨折
心因性
- ストレスや生活習慣
- 心臓神経症
痛む場所によって考えられる疾患
胸と背中の右側に痛みがある場合
胸や背中の右側の痛みは、肺炎・気管支炎、胸膜炎、肋間神経痛、帯状疱疹などが原因となることがあります。特に深呼吸や咳で痛みが強くなる場合は、胸膜の炎症が疑われます。また、帯状疱疹では発疹が出る前から片側に強い痛みが現れることがあります。さらに、胆のうや肝臓の病気による関連痛が胸や背中に出ることもあります。
発熱・息苦しさ・痛みの急激な悪化がある場合は、早めの受診が必要です。当院までご相談ください。
胸と背中の左側に痛みがある場合
胸や背中の左側の痛みは、肺炎・気管支炎、胸膜炎、肋間神経痛、帯状疱疹など呼吸器や神経の異常で起こることがあります。深呼吸や咳で痛みが増す場合は胸膜炎が疑われ、鋭い刺すような痛みが特徴です。また、帯状疱疹では発疹が出る前から片側に強い痛みが出ることがあります。
ただし、左胸の痛みは心臓疾患との鑑別が重要です。息苦しさ・動悸・圧迫感がある場合は早めの受診が必要です。
胸と背中の真ん中に痛みがある場合
胸や背中の真ん中が痛む場合、肺炎・気管支炎、胸膜炎といった呼吸器の炎症や、肋間神経痛、筋肉の緊張などが原因となることがあります。特に深呼吸や咳で痛みが強くなる場合は胸膜の炎症が考えられます。また、姿勢不良や長時間のデスクワークにより胸骨周囲や背中の筋肉に負担がかかり、痛みとして現れることもあります。
ただし、胸の中央の痛みは心臓や大動脈など重大な疾患が隠れていることもあり、強い圧迫感・息苦しさ・冷や汗を伴う場合は注意が必要です。症状が続く場合は早めにご相談ください。



