生活習慣病は、「成人病」と呼ばれていた疾患で、偏った食事、運動不足、喫煙、過度な飲酒といった不健全な生活習慣が積み重なることで発症します。これらの疾患は互いに影響を及ぼし合い、併発することで症状が悪化しやすくなり、最終的には心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる重大な疾患を招くリスクが高まります。
当クリニックにおける
生活習慣病への取り組み
当クリニックでは、科学的根拠に基づいた指導のもと、患者様1人ひとりの生活背景や価値観を大切にしながら、継続可能な健康管理を支援しています。生活習慣の見直しは、生活習慣病の改善・予防において最も重要ですが、長年の習慣を変えることは決して簡単ではありません。そのため当クリニックでは、患者様と医師・スタッフが継続的にコミュニケーションを取りながら、無理のない形で生活改善を進められるようにサポートしております。
また、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合には、医学的判断に基づいて薬物療法を適切に併用します。さらに、地域の基幹病院や専門医療機関と連携を取りながら、重度の糖尿病や入院管理が必要な病状に対しては、速やかに最適な医療機関をご紹介し、適切な医療を提供いたします。
生活習慣の乱れが関与する主な疾患
- 肥満症
- 高血圧
- 脂質異常症(高脂血症)
- 糖尿病
- 動脈硬化症
- 高尿酸血症(痛風)
- 脳血管疾患(脳卒中など)
- 心疾患 など
高血圧
高血圧は、安静時にも血圧が慢性的に高い状態が続く、日本人に多く見られる疾患です。特に40〜74歳の年代では、男性の約60%、女性の約40%が罹患していると推定されています。高血圧を放置すると、血管に絶えず強い圧力が加わり続けるため、動脈硬化が進行し、狭心症・心筋梗塞・心不全などの心疾患や、脳出血・脳梗塞といった脳血管疾患を引き起こすリスクが高まります。
高血圧の治療
治療の基本は、生活習慣の見直しと薬物療法です。塩分の摂取制限、適正体重の維持、日常的な運動習慣の導入など、日々の生活を見直すことが血圧の安定に寄与します。医師から処方された降圧薬については、自己判断で中止せず、指示通りに服用を継続することが重要です。ただし、状態が改善すれば医師の判断のもとで減薬や中止が可能な場合もあります。高血圧治療の目標は、一生お薬を続けることではなく、生活習慣を整えながらお薬に頼らず血圧を管理できる状態を目指すことです。
脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂質、特にコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)が過剰な状態を指します。かつては「高脂血症」とも呼ばれていました。過剰な脂質が血管内壁に蓄積されると、動脈硬化が進行し、最終的には心筋梗塞や脳梗塞といった重大な疾患を引き起こす恐れがあります。
脂質異常症の治療
動脈硬化が進行していない初期段階では、生活習慣の改善が治療の中心となります。具体的には、野菜中心のバランスの良い食事、定期的な運動、禁煙、適正体重の維持などが挙げられます。これらにより血中脂質の正常化が期待できるだけでなく、高血圧・糖尿病・肥満などの生活習慣病を同時に予防・改善することが可能です。必要に応じて、脂質をコントロールする薬剤を使用する場合もあります。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの分泌や働きに異常が生じることで、血糖値が慢性的に高くなる疾患です。血糖コントロールが不十分な状態が続くと、網膜症・腎症・神経障害といった細小血管障害に加え、心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害が引き起こされるリスクが高まります。
糖尿病の治療
治療は、食事・運動・生活習慣の見直しを軸とし、必要に応じて薬物療法を併用します。摂取カロリーや栄養バランスに配慮した食事管理、有酸素運動の習慣化、生活リズムの安定化、禁煙などが基本となります。また、糖尿病と併発しやすい高血圧や脂質異常症などの疾患、肥満も同時に管理することで、より効果的な血糖コントロールが可能となります。
痛風
痛風は、血中の尿酸が慢性的に高い状態(高尿酸血症)が続くことで、尿酸が関節内に結晶化し、激しい関節炎を引き起こす疾患です。典型的な発作では、足の親指の付け根などが急激に腫れ、強烈な痛みを伴います。その痛みは「風に触れただけでも痛む」と形容されるほどです。
また、痛風患者様は、そうでない方と比較すると高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病が隠れていることが多く、動脈硬化のリスクも高まるため、心筋梗塞や脳卒中の発症率が上昇する傾向にあります。
痛風の治療
近年では効果的な治療薬が数多く登場しており、適切な治療を受けることで症状のコントロールが可能です。日々の食生活の見直しや体重管理といった生活習慣の改善と併せて、定期的な通院と血液検査による経過観察が重要です。初期段階での受診が長期的な健康維持に寄与しますので、お早めにご相談ください。
内分泌外来(甲状腺)
甲状腺は首の前方に位置し、体の代謝を調整するホルモンを分泌する重要な臓器です。ホルモンの分泌に異常があると、全身の機能に影響を及ぼしますが、症状が多彩で非特異的なため、患者様自身が病気に気づきにくいこともあります。健康診断や人間ドックの触診や超音波検査で偶然発見されるケースも多いです。日本国内では推定500万〜700万人が甲状腺疾患を抱えているとされ、比較的身近な疾患と言えます。
バセドウ病
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、発汗の増加、暑がり、手の震え、動悸、息切れ、体重減少、下痢、生理不順などが現れます。また、情緒不安定や集中力の低下を訴える方もいます。頻脈により心臓への負担が大きくなることで、心房細動や心不全の原因となる可能性もあり、脳卒中のリスクにも繋がります。その他、骨粗しょう症の発症リスクの上昇、眼球の突出やまぶたの腫れといった眼症状が出る場合もあります。
診断は、血液検査および甲状腺の超音波検査によって行い、治療法としては抗甲状腺薬の内服、アイソトープ療法(放射性ヨウ素による治療)、外科手術があり、病状に応じた治療が選択されます。
橋本病
甲状腺ホルモンが不足すると、倦怠感・冷え・むくみ・便秘・肌の乾燥・体重増加・脱毛などが見られ、進行すると記憶力や判断力の低下、動作の緩慢化が起こることもあります。診断には血液検査と超音波検査が有効で、治療は不足したホルモンを補う内服治療(甲状腺ホルモン補充療法)が中心となります。
その他の甲状腺疾患と当クリニックの対応
甲状腺の腫瘍や炎症性疾患なども含め、甲状腺疾患は非常に多様であり、症状も個人差があります。しかし、いずれも適切な診断と治療を行えば、日常生活に大きな支障なく過ごすことが可能です。気になる症状がある方、あるいは健診などで甲状腺の異常を指摘された方は、どうぞお気軽にご相談ください。



